アードベッグ10年のテイスティング・世界中に「アードベギャン」を生む唯一無二の濃密エキス

アードベッグ、ウィスキーの聖地とも呼ばれる・アイラ島(スコットランド本島の西にある小さな島)

にある蒸留所のひとつである。

アイラ島のウィスキーの一般的な特徴は、

原料の麦芽を乾燥させるために燃やすピート(※)の焦げたような燻製香の強い主張や、微かな潮風の匂い(ヨード香とも言う)。

このアードベッグは、中でもそのピート香の含有率がもっとも高いもののひとつである(アイラ島でははここだけの精留器がつかわれているそうだ。これが酒の純度を高める。だからこそ大量のピートが焚き込めるのだ)

アードベッグ 、ラフロイグ、ラガヴーリンの3つは、その教区の名前をとって「キルダルトン3兄弟」と呼ばれている。

キルダルトンは8世紀に建てられた教会で、キルダルトンクロスと呼ばれる有名なケルト十字があり、観光名所でもある。

https://project.nikkeibp.co.jp/campanella/atcl/14/20140929/271867/より

そのキルダルトンクロスに最も近いのが、このアードベッグ 。
アードベッグ が島の住人ジョン・マクドゥーガルにより建てられたのは1815年
以来、マクドゥガル家とヘイ家により運営され、1973年にカナダのハイラムウォーカー社とDCL社が買収(同時に麦芽はポートエレン製のものに切り替えられた)
1981年に未曾有のウイスキー不況で閉鎖が決定されてからのアードベッグ の運命は浮き沈みが非常に激しい。

89年、アライド社の元で操業再開したが、90年代に入ってからも結局1年に2〜3ヶ月程度の操業しかできなかった。96年には再び閉鎖、その後グレンモーレンジィ社に買収され、今に至る。

その後の目覚ましい躍進はご存知の通り。

今では「アードベギャン」(アードベッグを愛してやまない人々)という名称を作ってしまう程、強烈に人々を魅了してしまうウイスキーとして知られている。

今回ご紹介するのは、もっともスタンダードな一品「アードベッグ10年」である

バーボン樽熟成の原酒をヴァッティング(※2)

ちなみに、アードベッグは「ノンチルフィルタード」製法。チルフィルター(冷却ろ過)とはつまり、原酒を冷却させ、樽熟成中に原酒内に生じた余分な油を分離除去すること。

アードベッグはあえてこれをしない。年月が滲み出させたナマのオイル、言わば原酒と熟成樽の血と汗のピュアなエッセンスがそのまま残っている。

1  植物の遺骸の堆積と泥が混ざって炭化したもの(泥炭)。もちろんアイラ島でとれた天然のものを使う。これは原料に加えるアイラ島の川の水(仕込み水)にも混ざっている。多様な植物の他、アイラ島海岸の海藻や貝殻なども混ざり、それらが味わいに大きな影響を及ぼす

※2 バーボン熟成用の樽にて10年以上熟成された原酒をブレンダーが混ぜ合わせて、味を整えた、ということ

さて、その味わいはいかに・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

土臭い焦がししょうゆを垂らした青リンゴ
蚊取り線香と干し藁の煙
苔蒸した鍾乳洞の中で食べるバニラアイス

89点

これはまさに「アードベッグ」としか言いようのないキャラクターの強い濃密エキスだ。
容赦ないヘヴィピートが、堆積したピートの中に含まれる苔や海藻の風味と共に蚊取り線香や焼けた干し藁のような煙たさを醸し、奥から染み出す焦がししょうゆのような甘みや、リンゴやバニラの華と交わりつつ、互いに引き立てあうビター&スイートを奏でている。

ラフロイグなどと同様に、表面的な煙たさクセの強さに、こういったタイプのものを飲み慣れていないと面食らうかもしれないが、実は豊かな甘みも兼ね備えた、複雑な旨みのあるウイスキー。はまる人はこの魅力にズブズブはまるだろう。

 

蘭子

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