ボウモア12年のテイスティング・アイラの女王、癒しの微笑み

ボウモア、ウィスキーの聖地とも呼ばれる・アイラ島(スコットランド本島の西にある小さな島)

にある蒸留所のひとつである。

一般的なアイラ島のウィスキーの特徴的なイメージは、

原料の麦芽を乾燥させるために燃やすピート(※)の焦げたような燻製香の強い主張や、微かな潮風の匂い(ヨード香とも言う)。

アイラ島最古の歴史(1779年から稼働)を持つボウモア(ゲール語での「大いなる岩礁」の意味)蒸留所は、その位置関係もあり、「アイラモルトの女王、アイラの中庸な酒」と呼ばれてきた。
南のヘヴィなもの(アードベッグ 、ラフロイグ、ラガヴーリンのキルダルトン3兄弟)と北のライトな酒(ブナハーブンやカリラ)の中間、アイラモルトの全体像を知るには、まずはボウモアから、とも言われている。
ちなみに、ボウモアの自家製麦芽、ピートの強さをはかるフェノール値では25ppm。ラフロイグやアードベッグ は40〜50ppmである。

原酒を得る蒸留の工程の中でも、スモーキーな成分よりフルーティな甘味成分多めの部分が重視されているようだ。

操業は1779年、とアイラでも最も古い。その後何度かオーナーが代わり、今では7台目のビームサントリーの所有(1994年から)。

ボウモアは伝統的なフロアモルティング(※)によって製麦している数少ない蒸留所である。
使用するピートも独自のピートボグから切り出したもので、ラフロイグやポートエレン製麦所が使う海辺のヨード香の強いものとは異なり、穏やかなピートスモークを醸す。

数多いラインナップのうち、今回は基本の12年ものを

12年ものは、主な熟成樽はホワイトオークのバーボン樽、そしてスパニッシュオークのシェリー樽の2種である。

1※  植物の遺骸の堆積と泥が混ざって炭化したもの(泥炭)。もちろんアイラ島でとれた天然のものを使う。これは原料に加えるアイラ島の川の水(仕込み水)にも混ざっている。多様な植物の他、アイラ島海岸の海藻や貝殻なども混ざり、それらが味わいに大きな影響を及ぼす

※2 2日間水に浸した大麦を床に広げ、4時間毎に攪拌し、麦の発芽によって発生する熱を均等にする。かなりの重労働らしいが、窓は開け放たれているので、この過程で周囲の自然環境からの様々な影響も麦に混ざる。

↓アイラ島で切り出されたピート

さて、その味わいはいかに・・・

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鰹節をまぶしたミルクチョコ

潮風と海藻とパイナップル

若木のログハウスの中で舐める甘露飴

88・5点

これはアイラの中でも癒し系なウイスキーだ。
アードベッグ程の濃い個性はないが、程よいピート感で万人向けの飲みやすさ。ピーティなもの、スモーキーなものを飲み慣れていない人にもオススメできる。
鰹節や海藻、潮風といった海の要素に、かすかなトロピカルフルーツやミルクチョコの甘味や、樽からくる香ばしい木香も漂う。
しかしあくまでも全てが優しく穏やか。
12年ものは、女王というよりは親しみやすいお姉さん感だ

この潮風の風味、生牡蛎にたらして食うとうまいらしい。試してみる価値ありだ
3000円代で買えるというコスパの良さも素晴らしい

蘭子

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