ラガヴーリン16年のテイスティング・アイラの巨人、情熱の歴史を飲む酒

ラガヴーリン (ゲール語で「水車小屋のあるくぼ地」)は、ウィスキーの聖地とも呼ばれる・アイラ島(スコットランド本島の西にある小さな島)

にある蒸留所のひとつである。

アイラ島の蒸留所の中でももっとも南にあるいわゆるキルダルトン3兄弟、「アードベッグ」「ラフロイグ」「ラガヴーリン」のうちのひとつ。

アイラウィスキーの特徴であるピート香は、南の蒸留所に行くほどその濃さを増す、といわれている。

「アードベッグ」「ラフロイグ」「ラガヴーリン」はいずれ劣らぬ「煙臭い」酒。しかしそれがたまらない、という人が多い。

隣接しており、共通の特徴を持ちながらも、

岩場に砕ける荒波を感じるラフロイグ
苔蒸した鍾乳洞に連れて行かれるアードベッグ
花々や果実のアロマの圧倒的濃縮を感じるラガヴーリン

と、このアイラ3大ピーティ・スモーキーモルトも、全然違ったキャラクターを楽しめるのがまた素晴らしい

このラガヴーリン、「アイラの巨人」の異名がある。

これは一つには他のアイラモルトの中でも蒸留にもっとも時間をかけること。

それからもう一つは、エントリーモデルにして16年モノ(たいていは10とか12年だろう)、とかなりの長熟品であることなどによっている。

ラガヴーリンでは、最初の蒸留で約5時間。そして二度目の蒸留で11時間を費やす。
この長時間かけて、くびれのないどっしりしたオニオンシェイプの再留釜から得られるのは、アイラで最もオイリーでヘヴィな酒質の原酒だ(フェノール値は34〜38ppmと、ラフロイグやアードベッグ 以下ではあるが十分強い)。

創業は1816年。ラフロイグと同じジョンストン家によって経営されていたが、紆余曲折を経て1889年、有名ブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」を生み出すピーター・マッキーの手に渡る。
以後主に「ホワイトホース」のキーモルトとしてラガヴーリンは作られていくが、ディアジオ社に渡ってのちの1988年、同社がクラシックモルトシリーズの一つとして「ラガヴーリン 16年」を選んだことから、シングルモルトとして有名になっていく。

※1  植物の遺骸の堆積と泥が混ざって炭化したもの(泥炭)。もちろんアイラ島でとれた天然のものを使う。これは原料に加えるアイラ島の川の水(仕込み水)にも混ざっている。多様な植物の他、アイラ島海岸の海藻や貝殻なども混ざり、それらが味わいに大きな影響を及ぼす

さて、その味わいはいかに・・・

さて、その香りとお味はいかがなものだろうか・・・

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焦げた干しブドウとアプリコット

シロップとクレゾール で煮詰めたプラムとプルーン

ラベンダー畑に降り積もる、湿った紅茶葉と煙草

89点

ラガヴーリン は「ラプサンスーチョン」というスモーキーなテイストの紅茶に似ている、とは有名な評論家の言葉(前に実際にそのお茶を飲んでみたら、確かに、その通り、とうなずかされた)
ピンポイントに固有名を挙げずとも、焦げた紅茶葉、または胡椒をまぶした紅茶葉や煙草の葉と言ったらいいか、そんな独特なテイストがラガヴーリンにはある。
そして煙たさの中に、ラベンダーのような花の香り、干しブドウやアプリコットやプルーンのような甘味が濃厚に凝縮されており、実に複雑で奥深い。
アイラモルトの中でも、フルーティな甘みの強さと強烈なスモーキーさのアンビバレントなギャップが最も激しいのがラガヴーリン だろう。この多層的な奥深さ、16年という長期熟成の中からしか生まれてこないものなのかも。
「Time TAKES OUT THE FIRE but LEAVES IN THE WARMTH」(時は炎を消し去る、しかし温もりだけは残り続ける」
とはボトルのラベルにある言葉だが、まさに、時を経ても温もり続ける16年の情熱の歴史を飲む酒である。

蘭子

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