ジュラ蒸溜所のあるジュラ島はアイラ島の北東に位置する、南北40キロ、東西10キロの小さな島。
人口わずか200人、しかし野生の鹿の数は5000〜6000頭であるという。アイルオブジュラとはヴァイキングの言葉で「鹿の島」を意味する。
ジョージ・オーウェルが、最後の長編小説でありディストピア小説の名作「1984」を執筆するために、当時電話線も引かれていないジュラ島へ滞在していたという話は有名。
島の中でも特に隔絶された場所にある最北端のバーンヒルのコテージが執筆場所として選ばれた。
創業は1810年だが、それ以前から近所では長く密造酒作りが行われていた記録もあるよう。
20世期に入り地主と揉めて50年間も閉鎖されていたが、1963年に再オープン。
ブレンデッドの同名銘柄でも有名なインバーゴードン系列だったが1995年ホワイトマッカイグループが買収。さらに2007年からはインドのUBグループ、現在はフィリピンの大手種類メーカー、テンペラドールの所有となっている。
ご近所アイラ島のウイスキーと区別するため、ピートを焚き込まない製法で作っていたが、現在はピーティなウイスキーも作られている。ノンピートかつかなり巨大で背の高い(8メートル)のポットスチルで蒸留されることから酒質はライトなハイランドタイプが基本。
さて、今回ご紹介するのは2020年くらいにパッケージが一新され生まれ変わった「ジュラ10年」
バーボン樽熟成にオロロソシェリー樽フィニッシュのもの
ジュラ島↑
さて、その香りとお味は・・・
甘い麺ツユとマジックペンを塗った藁半紙
海藻とハチミツを塗った木机
オレンジの甘露煮
83点
第一印象としてはウッディさがくる。芳しい樽香というよりは、若木の木材や紙っぽい感じだ。そこにマジックやフェルトペンのようなエタノール感もかすかに混じる
よく味わえばライトなハチミツっぽい甘さ、オレンジ、そこにかすかな海藻や潮っぽさも混じり、ちょっと麺つゆのようにも思える甘酸っぱさ。
やはり基本的にライト。でも余韻も短く、ライトというよりはちょっと薄っぺらいと言いたくなるような感じも。
味わっている間消えないエタノール感混じりの木香も、未熟成故の変なえぐみのようなものが混じり(これは逆にライトさ故に大袈裟にはなっていないが)、ちょっとネガティヴ面
決してまずいわけではない。よくわからない格安ブレンデッドよりは全然美味しい。しかし10年12年もので3000円台で買えるシングルモルトやブレンデッドの中には、もっと美味しいものが結構あるので、正直あえてこれをオススメする気にはなれない・・・
前に飲んだリニューアル前の(まだ結構手に入る)ピートが効いたスーパースティションや、16年もの(これもほんのりピートを感じた)などはかなりユニークかつ、これ好きだわ、と思ったものだったが、この10年ものは個人的にはそこまでではなかった(ラベルデザイン変更前のはどうなのか)
蘭子