ティーリング・シングルポットスティルウイスキーのテイスティング&レヴュー・名家の伝統を受け継ぐ新鋭が放つ、新しいアイリッシュポットスチルウイスキーの形

ティーリング蒸溜所について

ティーリング蒸溜所は、アイリッシュウイスキー復興の礎でもあるクーリー蒸溜所( 1987年設立)のジョン・ティーリング氏の二人の息子、スティーヴン氏とジャック氏が2014年にアイルランド首都のダブリンに設立した蒸溜所。

1782年からウイスキー造りを家業とするティーリング家で育ったジャック氏とスティーブン氏は、2011年、クーリー蒸溜所がビーム社へ売却された後に、自らの会社「ティーリング社」を立ち上げる。元はボトラー(独立瓶詰業者)としてブッシュミルズ蒸溜所やクーリー蒸溜所、または現在、父のジョン・ティーリングが所長を務めてもいるグレートノーザン蒸溜所の原酒などを扱っていたが、満を辞して自社の名を冠したティーリング蒸溜所を設立した。

その昔、実はティーリング家はアイルランドのダブリンでウイスキーの蒸留所を持っていた。 1700年代 のお話である。しかし、 アイリッシュウィスキーへの需要減少などの理由に、 ダブリン市内の蒸留所はすべて閉鎖してしまった。

今回、首都ダブリンにおいて約125年ぶりに稼動を始めたのがこの新しいティーリング蒸留所、というわけである(歴史を辿ると、ティーリング蒸溜所のフェニックスのアイコンに込められたものが見えてくるようだ)

アイルランド蒸溜所マップ(2017年版)↓

ティーリング蒸溜所↓https://www.rewardingtimes.ie/teeling-whiskey-distillery-tour-2018.htmlより

さて、そのティーリング蒸溜所が、初の蒸留所元詰めリリースとして発表したのが、今回ご紹介する「ティーリング・シングルポットスチルウイスキー」である。

ポットスチルウイスキーとは

ポットスチルウイスキーは、アイルランドのみで造られているウイスキーの種類である。

原則として

・原料は大麦麦芽(モルト)30%以上、未発芽の大麦30%以上、他ライ麦や小麦、カラス麦などをブレンドする。
・蒸留は、単式蒸留器(ポットスチル)で3回

ということが決められている

スコッチやジャパニーズでは用いられない未発芽の大麦を用いることで、穀物本来の風味が醸し出されたり、大麦由来の独特なオイリーな口当たりを付加したり、といった特徴が現れることで知られている。

今回の「ティーリング・シングルポットスチルウイスキー」には、大麦麦芽(モルト)が50%、未発芽の大麦が50%が使われている(他の穀物は使われていない)。

もちろんアイリッシュならではの3回蒸留

新樽(ヴァージンオークカスク)、バーボンカスク、ワインカスクにてそれぞれ熟成された原酒がバッティングされたものである

さてさて、そのお味はいかがなものだろうか・・・・

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甘露煮のサツマイモ

ライチキャンディと麦のビター
芋焼酎をかけたプラリネ

90点

非常に独特な風味である

第一印象はウイスキーというより芋焼酎のような風味

サツマイモの甘露煮とライチのような甘みに、麦の甘苦さがじんわりと深く響いて絡みついてくる

焼き菓子のようなほっこりした甘みと、モルティなほろ苦さの不思議な共演

ビター&スイートな穀物の旨味がユニークな形で生かされた傑作

スコッチに飽きた人は、こんな味があったのか、と驚くかもしれない

蘭子

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