キルケランは
キャンベルタウンに2004年にオープン(復活)した「グレンガイル蒸溜所」のシングルモルトである。
↑スコットランドのウィスキー生産地を6つに分けたもの。グレンガイル蒸留所やスプリングバンク蒸留所のある「キャンベルタウン」はスコットランドの西南、キンタイヤ半島の先端近くにある街である。
かつては30以上もの蒸留所があり、ニッカの創業者、竹鶴政孝も修行で滞在したことでも知られるキャンベルタウン。
米国における禁酒法の時代、密輸で粗悪な商品を大量に販売していたこともあり、その悪評判から衰退。1920年には20ヵ所、10年後の1930年には3ヵ所、そして、1934年には、とうとうスプリングバンクとグレンスコシアの2カ所だけになってしまった・・・
そして第3の蒸留所として、2004年、スプリングバンクのオーナーによって80年ぶりに復活を遂げたのが、今回ご紹介のキルケラン12年を生んだ「グレンガイル蒸溜所」である
グレンガイルは、1925年に閉鎖されたオリジナルと同じ敷地に立てられており、キャンベルタウンに新しい蒸溜所が建設されたのは実に125年ぶりのことである。
グレンガイル蒸溜所↑(https://www.whiskys.co.uk/distilleries/kilkerran-whisky)より
グレンガイル蒸留所はもともと歴史ある蒸留所。創業は1872年のこと。
しかし、1925年に閉鎖され、残っていた樽のストックはすべてオークションで売られてしまったのだった。それを復活させたのが、スプリングバンク蒸留所のオーナー、J&A・ミッチェル社のヘドラー・ライト氏。
彼が2000年にスプリングバンク蒸留所に隣接していたグレンガイル蒸留所の建物を購入。そして修復。2004年より蒸留を開始した
姉妹蒸溜所であるスプリングバンクでフロアモルティングしたライトピート麦芽を使用し、2回蒸溜でつくられる(キルケランの生産量はわずか3万リットルほど、年に1ヶ月ほどスプリングバンクの職人により蒸溜されるらしい)
今回ご紹介する「キルケラン12年」はバーボン樽70%とシェリー樽30%を使用した12年熟成である。
これまで「Work in Progress(=進行中、未完成品)」という名で2009年から2015年まで、リリースされる毎に進化を遂げてきたキルケランが、一つの完成系に至った証としての、記念すべき一本である。
さて、そのお味は如何なるモノだろう・・・・
蒸したパンにキウイとオレンジの果汁
甘い茹でキャベツと苦い籾殻の煮汁
潮風にさらされたリコリス
91点
姉妹蒸溜所とも言えるスプリングバンクのスプリングバンク10年にも引けを取らないほどにおいしくて独創的なウィスキーだと思う。
キャンベルタウンモルトの味の特徴であるブリニ―(潮風の影響からか、塩っぽい味わい)さはスプリングバンクと通底するところではあるが、
キルケラン特有の、シトラスやキウイっぽい酸味と、茹でキャベツのような甘味や、まるで蒸したてのパンのようにふくよかで香ばしい麦の旨味が濃厚に混在しており、とてもオーガニックで個性的なおいしさに満ちている
スプリングバンク同様に、職人の手間暇が、そのまま複雑な旨味のマジックに繋がっている傑作だなあ、と思う。
まだ新しい蒸留所でもあるので、これからの展開も楽しみにしておきたいところだ。
(https://www.whiskys.co.uk/distilleries/kilkerran-whisky)より