ブルックラディ・ベアバーレイ2010は
アイラの新鋭ブルックラディが、原料の大麦の違いに焦点を当てたスペシャルな一品
ウイスキーの原料となる大麦には二条大麦と六条大麦がある。
その中間の粗四条といわれるのが、古代品種といわれるベア大麦なのだそう。
その名の通り、ベアバーレイ2010にはこのベア種と言う大麦が用いられているのだが、その起源は5,000年の昔に遡る。
実はスコットランドで蒸留が行われ始めた頃から何世紀もの間使用されてきたものなのだそう。
しかし20世紀に入り、もっと育てるのが簡単で、かつアルコール収量も高い麦(主に二条大麦のコンチェルト種など)が登場し、ベア種はほとんど栽培されなくなってしまった。
現在ではこのベア種が栽培されているのはオークニー諸島のみ、とのこと。
このベア種、アルコール収量の効率などは良くないものの、現在主流の優良品種にはないコクや甘味を引き出せる利点がある、とのことで、実は昨今、一部で最注目されてきてもいる(ラディの他、アランやスプリングバンクなどでもベア種が用いられたウイスキーが作られたことがある)。
というわけで、ブルックラディが農学研究所と協力し、オークニー諸島の複数の農場にて栽培されたベア種を用いて作られたのが、このブルックラディベアバーレイ2010なのである
2010年に収穫された大麦が使われ、熟成期間は8年のもの(ちなみにスタンダードなブルックラディ・アイラバーレイ2011は6年熟成)
以下公式コメントより
六条大麦のベア種の起源は、農耕の黎明期、5,000 年前にまで
遡ることができる。ベア種は英国の最も古い種類の栽培穀物で、
スコットランドで蒸留が行われ始めた頃から何世紀もの間
使用されてきた。しかし20 世紀に入り、効率と商業的利益に
重きが置かれ、味わいよりも生産量が追求されるようになると、
最大限の収穫高が得られ、かつ生育が容易で生産効率が高い
品種が栽培されるようになった。
常に味わいを重視し極めたいと考える私たちは、2006 年以来、
ハイランズ&アイランズ大学の農学研究所と協働し、シングルモルト
ウイスキーの蒸留に、再びベア種を用いてきた。
ベア種は屈強な穀物である。やせた土壌や、日照時間が限られ
生育期が短い環境にも適応できる。
厳しい最北の地のつかの間の夏の太陽でも育つのだ。
早い段階でその麦粒の力強さと弾力の強さが証明された…
ミルが壊れたほどなのだ!
この謎めいた古代穀物の魅力を最大限に引き出す方法を理解するには、
時間と忍耐が必要だった。
さて、その香りと味わいはいかなるものだろう・・・
潮水とアプリコットジャム
燻した麦を混ぜた梅昆布茶
ハチミツ漬けのキウイと梨
91点
ブルックラディ・アイラバーレイ2011 も素晴らしかったが、これはそれに輪をかけて素晴らしい
単純に言えばアイラバーレイを濃くしたやつ、である。
まず、この非常に濃厚な甘味と塩辛さのセッション
煮詰めたアプリコットジャム、ハチミツ、キウイや梅昆布茶のような甘酸っぱさ、
濃厚なのにべったりとしつこいわけではなく、コクと奥行きがある。
なるほど、この甘味の濃さとコクが、麦の違いによるものなのか、と。
さらには潮辛いほどの、潮水のようなミネラル豊かな塩味も負けずに主張してきて
そしてブルックラディやポートシャーロットにはお馴染みの、香ばしく燻された麦のビターがしめる
この甘味、しょっぱ味、焦げた麦のほろ苦さ、の3重奏が素晴らしい。
甘い夢を描く、そしてその実現のために流されるしょっぱい血と汗と涙、苦労もなめねばならない。
それらが渾然一体となった時、こんな重層的でドラマチックなテイストが生まれる
2019年に出たこのベアバーレイ2010、まだ手に入るところも少なくないようだ。
次のヴィンテージが出るのはいつかわからない(ベア種の生産量が安定した時でないと作らないよう)
見つけたら逃すまじ!
蘭子