「季の美」の紹介
世界的なブームとなっているクラフトジン(※1)だが、ここ日本で造られるジャパニーズ・クラフトジン(作られる蒸留所は、大手から小規模、老舗から新興のものまで様々)も大注目を浴びている。
これらは海外産のジンとは明確に異なる、日本の地域性が活かされたジンであるのが特徴である。
今回紹介する「季の美 京都ドライジン」は日本初のジン専門蒸留所である「京都蒸留所」(2016年に誕生)が手掛けたもの。
京都蒸留所、そして「季の美」は、日英混合のエキスパートたちの少数精鋭が生み出したもの。
ヘッドディスティラーは、英国からやってきたアレックス・デイヴィス氏(エジンバラのヘリオット・ワット大学(醸造・蒸溜学科)を卒業した後、すでに新進のジン蒸溜所 2 社で勤務経験があり、新しいレシピづくりの経験を豊富に持つ)。
またデービス氏を支えるディスティラーとして、スコットランドでの蒸溜経験を含む業界20年超の経験がある元木陽一氏、日本を代表するウイスキーメーカーで工場長やブレンダー室長を歴任した蒸溜酒のエキスパート大西正巳氏など、
この京都ドライジンを「日本的なジン」として唯一無二のものとしているのは
数世紀に渡り最高級の日本酒を生み出し続けている伏見の名水、また、ボタニカルとして加えられている柚子、山椒、宇治の緑茶など地元で栽培される数々の原料などだろう(他にもヒノキ、赤しそ、柚子、生姜、笹など、やはり徹底して和の素材のボタニカル配合)
この日本的なものへのこだわりの姿勢、後のジャパニーズクラフトジンブームの先鞭をつけたと言っても過言ではない。
季の美につかわれているボタニカル↓
(https://whisk-e.co.jp/news/kinobi2016aug/ より)
香り付けの工程も手が込んでおり
11種類のボタニカルを、①ベースボタニカル②シトラス系ボタニカル③お茶系ボタニカル④フルーティでフローラルなボタニカル⑤スパイス系ボタニカル⑥ハーブ系ボタニカルという6グループに分類。
そしてグループを別々に蒸留した後、それぞれの蒸留液を「季の美」独自のブレンド比率で融合させていく、というもの
京都蒸留所ではこれを「雅」(みやび)製法と呼ぶらしい。
※1 ジンとは、穀物類を蒸留して作ったアルコール液(スピリッツ)にジュニパーベリー(ヒノキ科の針葉樹・セイヨウネズの実)で風味付けして再蒸留して作ったお酒の事。通常、香り付けにはジュニパーベリー以外のだいたい5~10種類の多種多様なボタニカル(草根木皮類)も使われることになる(※2)世界各国で流行している昨今のクラフトジンは、それぞれご当地ものの珍しいボタニカルを何種類も使って香り付けをし、個性を競い合っていると考えると良い。
※2 ジンによく使われるのは、ジュニパーベリー(必須)、コリアンダー・シード、アンジェリカ・ルートorシード、オリス・ルート、リコリス、カルダモン・シード、レモンピール(★)、オレンジピール、ジンジャー、シナモンなどなど(http://liquorpage.com/gin-botanical-summary/ より抜粋)
↓「季の美」の、ブレンド前のグループ分けされた原酒
(https://www.syokuraku-web.com/special/3815/より)
さて、その味わいはいかに・・・
ジュニパー、山椒、ショウガの静かな電撃
典雅なヒノキ香
秋の清らな空気の森
玉露の緑、柚子の黄色、紫蘇の赤
混然一体の、極彩色の風景
89点
ほんとうに、秋の京都の風景(私自身が実際に行ったのはだいぶ昔だが)が口腔と鼻腔に広がる感じがあり、感動してしまう。
この色彩豊かさはMonkey47にも匹敵するが、やはりあちらはドイツの森、そしてこちらは日本の紅葉の森なのである
和の素材を用いて、和の風景を極めて繊細に色彩豊かに描き出すことに成功した「季の美 京都ドライジン」
目を閉じてゆっくりと味わうべき、日本が世界に誇る傑作だ
700mlで4,500円前後。手に入れて飲むべし
蘭子