グレンカダム 蒸溜所は、ハイランド東部のアバディーン、アンガスビーフなどでも有名なアンガス地方の古い町ブレヒンに、地元の地主ジョージ・クーパーにより1825年に創業された(このブレヒンの町にはかつて「グレンカダム」のほかにもう1つ「ノースポート」という蒸留所があったが、1983年に閉鎖されている)
スペイサイドを除く主な蒸溜所マップ(グレンカダム は東の中程)
オーナーは次々と変わっていくが、1959年ハイラムウォーカー社が買収し、同社のもとで大改修工事が行われた。
その後アライド・ドメック社の所有となり、2003年まで休業。
現在はアンガス・ダンディ社の元で生産が再開されている。
バランタインのキーモルト(いわゆる魔法の7柱の一つ)の一つとしても有名
またスチュワーツクリームオブザバーレー(評価の高いブレンデッドウイスキー らしいが現在はオールドボトルを探すしかないよう)のキーモルトでもあった。
クリームオブザバーレー(大麦のクリーム、大麦の精髄)とはグレンカダム のクリーミーで甘い味わいにを評して付けられたものなのだそうだ。
グレンカダムはかつてはオフィシャルボトルが出されていなかったため入手しづらいシングルモルトの1つだった。しかし、現オーナーアンガス・ダンディ社はシングルモルトの販売に力を入れており、今回ご紹介するスタンダードの10年を皮切りに、ポートウッドフィニッシュ12年、オロロソカスクフィニッシュ14年、15年、21年、そしてシングルカスクの32年などバラエティ豊かなラインナップが揃えられてきている。
さて、その味わいは・・・
いぶした麦の煙の中で飲む
花びら入りの紅茶
焦げたキャラメル
ガソリンで煮詰めたハチミツリンゴ
89.5点
実にフローラルで濃厚にスイート。と言ってもこれまでに飲んだシングルモルトの中からは似たものが見つからない。
最初に花っぽい香りの充満を感じるが、これまでに飲んできたスペイサイドやハイランドのモルトに特有なハチミツ混じりのあの感じではない。
白やピンクがかった紫のヒースの野原、というよりはもっと色の濃い、ローズピンクの花びら。
または花びらの浮いた紅茶、アップルティーやローズヒップティーもちょっとだけ連想するが微妙に違う
とにかく、何の花なのかはわからないが花びらを紅茶で煮詰めたような芳香。こんな芳香、どこからくるのだろう?何に由来しているのだろう?周囲に咲いている花の香りを樽の呼吸が酒に取り入れているのだろうか?
さて、さらに味わえばうっすらとピート香が絡みつつの麦の甘味が、焦がしキャラメルのようにコク深いまろやかさ(なるほど大麦のクリーム!)
ガソリンのようにシャープなリンゴっぽい酸味も
とてもユニーク、そして味わい深い。こんなウイスキーあったんだ、と個人的にはウイスキー経験値が更新された一本。
個人的には味わえば味わうほどはまっていってしまった。
割と見た目も地味だし結構マイナーな蒸溜所かもしれないが、かなり素敵な一本
蘭子