トマーティン蒸溜所は中央ハイランドのインバネスにあるトマーティン村(トマーティンとは「ネズの木の茂る丘」の意味)にある。
標高は310メートル。ブレイヴァル、ダルウィニーに続き3番目の高地にある蒸溜所である。
近くにはオールドレアーズハウス(古い領主の家)と呼ばれる農家があり、古くから密造酒の製造や受け渡しが盛んに行われていたらしい。
↑ハイランドの主な蒸溜所(白塗りの部分がスペイサイド)
創業は1897年、地元の投資家(実業家)たちの手による。
二度の大戦によるダメージで一時不遇をかこつも、1960年代〜1970年代の度重なる増築により、スコットランド最大級のスチル数を誇る蒸溜所として生まれ変わる。
しかし1980年代のウイスキー不況により前オーナーは倒産。
そこで救いの手を差し伸べたのがなんと日本の宝酒造と大倉商事によるベンチャー企業
1985年、宝酒造と大倉商事に買い取られたことで、トマーティンは日本企業が所有する初の蒸溜所となったのである。
その後、生産量縮小の方針(結局スチル数は半分近くにまで減らされた)がとられつつも主にブレンデッドスコッチ用の原酒(アンティクァリー ,エンシェントクランなど)が作られていた。
2004年以降、シングルモルトとして12年、18年、25年ものと相次いでボトリングされていき、現在に至るまで順調にラインナップを増やし続けている。
ちなみに、1745年の有名なジャコバイトの反乱における最後の決戦「カローデンの戦い」の後、敗北したハイランド兵たちが別れの盃を酌み交わしたと言われる通称「別れの丘」から流れるオルタ・ナ・フリス(「自由の小川」)の水が仕込み水として使われている。
カローデンの古戦場↓
https://www.bbc.com/news/uk-scotland-highlands-islands-47813140
Tomatin sales soar 25% in 2017
蒸溜所の風景↑
今回ご紹介するのは、バーボン樽とアメリカンオークの新樽で熟成された原酒をシェリー樽でフィニッシュした12年もの
さて、その味わいは・・・
麦のクリームシチュー煮込み
こうじに漬けた杏
べっこう飴にキンカン
白胡椒をまぶした香木
89.5点
現行の瓶のデザインと蒸溜所の名前がなんとなく気取ってる感があって惹かれず笑、後回しにしていた銘柄だけど、飲んでみてびっくり、味わってうっとり、かなり美味しく相当出来がよく、一転してとても好きになってしまった。
第一印象は麦の甘味がじんわり、ちょっと甘じょっぱい(うっすらこうじ味噌のような)感じもするライトなピートに引き立てられつつ
その優しく豊かな甘味とほのかな塩味と甘酸っぱさが、麦を煮込んだハチミツ混ぜホワイトシチューのようにも、杏(アプリコット)やキンカンを包んだべっこう飴のようにも思えてくる
アフターテイストは上品な香木のようなかすかにウッディなスパイシーさで締める
豊かな麦の甘味と優しいピートがなかなか絶妙でクセになる。
甘味・塩味・フルーティな酸味からちょっぴりスパイシーまで複層的な香味のレイヤー展開も楽しめる。
このバランス、ありそうでなかったかも。
改めて見てみてみると、名前もそして瓶の形までも「トマト」みたいで可愛いし美味しそうじゃないか笑
いろいろ含めてかなり好きになってしまった
4000円前後、安ければ3000円台で買える場合もあり、このクォリティからすればコスパも素晴らしい
蘭子