バルヴェニー12年ダブルウッドのテイスティング・グレンフィデックの姉妹蒸溜所発のまったりまろやかモルト

バルヴェニーはスコットランドでももっとも多くの蒸留所が密集するスコッチウィスキー最大メッカとして知られるスペイ川流域のエリア、通称スペイサイド(全長172キロの川の流域に、なんと50以上もの蒸留所がある)にある蒸留所のひとつ。

山に囲まれ、豊富な緑や花々と良い水に恵まれたスペイサイドのウィスキーに共通する特徴は、比較的飲みやすい華やかな甘さであると言われている(もちろん製法によっては例外も豊富)。

↓スペイ川とスペイサイドにある主な蒸留所

バルヴェニーはダフタウン(スペイサイドの中心であり、最も蒸溜所が密集するメッカ中のメッカ)にある古城の名前、ゲール語で「山の麓の集落」を意味している。

この古城は中世に建てられたあとに廃城となり、麓に新バルヴェニー城が築かれた。

1892年、グレンフィディック蒸溜所の創始者ウィリアム・グラントがこの城の跡地を購入し、開設したのがバルヴェニー蒸溜所である(建設当初はグレンフィディックの生産を拡大するため第2工場として建てられたそう)

創業者が同じ(経営も代々グラント一家)で、しかも同じ敷地内に建てられている「グレンフィデック蒸留所」とは姉妹関係ともいえるが、この2つは、原料の麦以外は製法の様々な点でかなり異なる特徴を持っている。味の特徴もかなり別物なので、全然別ブランドとして捉えた方が良いと思う。

https://www.xtrawine.com/en/producers/the-balvenie-distillery/1993より

姉妹蒸留所・バルヴェニーとグレンフィデック(原料の麦や酵母は同じ)の異なる主な点とは

●グレンフィディックは敷地内にあるロビーデューの湧水を使用しているのに対し、バルヴェニーはコンヴァル丘陵からの数十の泉の湧水を仕込水に使用

●バルヴェニー蒸溜所では、手間暇のかかる伝統的な製法「フロアモルティング」(2日間水に浸した大麦を床に広げ、4時間毎に攪拌し、麦の発芽によって発生する熱を均等にする。かなりの重労働らしいが、窓は開け放たれているので、この過程で周囲の自然環境からの様々な影響も麦に混ざる)を受け継いでいる。熟麦芽の乾燥も自ら行っており、ライトなピート香の麦芽を造るため、ピートの香りづけも調整している

●さらに、「バルヴェニーボール」(ネックにこぶが付いた独特のスワンネック型のポットスチル。グレンフィディックのスチルよりも首がやや長い)という独特の蒸溜釜を使用。この釜で時間をかけて特有のリッチな香りの成分を抽出する。

●独自の樽づかい。バーボン樽やシェリー樽のみならず、ワインやポートワイン、カリビアンラムなどに使用した樽など、様々なタイプの樽を組み合わせにより多様なモルトを少量生産

お酒ファン.comより

今回ご紹介する「バルヴェニー12年ダブルウッド」はバーボン樽で熟成した原酒を更にシェリー樽で後熟させた、バルヴェニーのラインナップ中最も基本的な一本である。

さて、その味わいはいかなるものだろう・・・

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

アーモンドミルクに漬かった青リンゴ
サツマイモの甘露煮
メイプルシロップとカフェオレ
澄んだ水に溶かしたキャラメルとバニラ
90点
グレンフィデックの姉妹蒸留所、というイメージを持って飲むと、良い意味で裏切られる。
澄んだ水のような優しい飲みやすさや、奥に感じられる微かな青リンゴのような甘味は確かに共通するものがあるとはいえ、すっきりフレッシュなフィデックと、独特のまったりまろやかな甘いコクのあるバルヴェニーでは結構「別物」という感じ。詳しくは解説の方に書いたが、使う水もかかる手間も蒸留釜も樽も違うのだから当然ではある。
このアーモンドミルクや甘露のようなまったりまろやか〜な感じ。おそらくバーボン樽からくるバニラ香とシェリー樽由来の香味がうまく混ざったところから出ていると思われるが、例えばベンリアック12年シェリーウッドやエドラダワー10年なんかにも感じた。個人的にかなり好きな香味である。

お値段はフィデック12年より高いが、それだけ手間暇かかった少量生産のこだわりであるということ。クォリティには見合っている。
優しい飲みやすさがあって質も高いものを、という方は是非
蘭子

おすすめの記事