ベンリアック蒸留所は、スコットランドでももっとも多くの蒸留所が密集するスコッチウィスキー最大メッカとして知られるスペイ川流域のエリア、通称スペイサイド(全長172キロの川の流域に、なんと50以上の蒸留所がある)の北部にある蒸留所。
山に囲まれ、豊富な緑や花々と良い水に恵まれたスペイサイドのウィスキーに共通する特徴は、比較的飲みやすい華やかな甘さであると言われている(もちろん例外もたくさん)。
↓スペイ川とスペイ川周辺にある主な蒸留所(ベンリアックは上流の方、エルギン地区にある)
ベンリアック(灰色がかった山、の意味)蒸留所は創業が1898年だが、時代の波にのまれわずか2年で閉鎖される。
ようやく操業再開したのはグレンリベット社と合併した1965年以降。当時はスペイサイドにしては珍しいヘヴィピートタイプも作られていた。しかし、しばらくはブレンド用原酒のみがつくられており、シングルモルトが作られるようになったのは1994年。
さらに転機となったのは2004年
ビリー・ウォーカー氏のもとで独立資本として再出発 (「ベンリアック・ディスティラリー社」という社名で「ベンリアック蒸溜所」を軸に、のちに「グレンドロナック蒸溜所」「グレングラッサ蒸溜所」も傘下におさめていく)してからは、個性的なボトルが多数生み出されており、注目度があがってきている。
2012年以降、一部フロアモルティングも再開、ノンピートものに加え、ヘヴィピート原酒の製造も再開され、様々な種類の樽( シェリー、ラム、マルサラ、赤ワインなど30種類以上の樽 を使いわける、たいへん実験精神あふれる蒸留所でもある)も使い分け、さらに多彩なボトルを生み出し続けている。
今回ご紹介するベンリアック12年シェリーウッドは辛口のオロロソが60%と、極甘口のペドロヒメネスが40%と、異なるシェリー樽原酒をミックスさせたもの
この作品は、2017年から2018年6月までしばらく休売だったことがあるが、満を持して再発売された
さて、そのお味はいかなるものだろう・・・
アーモンド風味のべっこう飴
硫黄の温泉に漬けたイチゴミルク
焼きいものクランベリー和え
バター風味の生クリームをつけたトースト
91点
シェリー樽からくるドライベリー系の甘味と酸味が濃厚で、さらにそこにアーモンドミルクやべっこう飴のようなまったりした甘さが絡み、スイートポテトやトーストされたパンのような香ばしさもふんわりと漂う(かすかなピートが硫黄っぽいコクを添加してもいる)
種類の違うシェリー樽のフレーバーのミックスが魔法のように功を奏した、まるで高級なパティスリーのように豊かで多彩な風味のレイヤーが楽しめる濃厚美酒。5000〜6000円前後で買えるシェリー樽熟成系のスコッチでは、個人的にグレンドロナック12年やグレンファークラス15年以上に好きな、大プッシュしたい一本だ。
そういえばウイスキーガロアで土屋守さんも90点という高得点をつけていた。納得。
蘭子