ミルトンダフ蒸溜所の創業は1824年。ウイスキー作りのメッカであるスコットランドはスペイサイドのエルギン地区に、もともとはその地に古くからあるプラスカーデン修道院が経営する製粉所だったものが改築されて誕生。
ミルトンダフの「ミルトン」とは「工場のある所」の意。ダフはその土地を所有することになった「ダフ一族」から。
蒸溜所があるのはイギリスで最も良質の大麦を産すると言われる一大穀倉地帯であり、「ブラックバーン」というウイスキー作りに適した良質の水の流れる小川が流れている。
蒸溜所近くにある1236年に建てられたプラスカーデン修道院では、ブラックバーンの水を利用して修道僧たちがエール(スコットランドで一番美味しい、と評判であった)を作ってきた歴史がある。修道院ではエールだけでなくウイスキーの蒸留も行われていたそうで、もともとは修道院が経営する製粉所だったミルトンダフの蒸留技術は修道僧たちから伝えられた可能性もあるらしい。
1930年代にハイラムウォーカー社が蒸溜所を買収し、同社の下で近代化・拡張工事が行われた後は、同じく同社の傘下であったバランタイン社の代名詞であり「ザ・スコッチ」との異名すらある名作ブレンデッドウイスキー「バランタイン17年」の味わいの土台を担うモルト(キーモルト)としても有名になる。
1964年に導入されたローモンドスチルによって蒸留された「モストウィー(Mosttowie)」と名付けられたウイスキーを販売していたこともあるが、1981年にローモンドスチルが撤去されてしまって以降、これは幻の銘柄。
今回ご紹介する「ミルトンダフ15年」は、「グレントファーズ15年」「グレンバーギー15年」とともに、バランタインの味わいの中核を成してきたが、これまではシングルモルトとしてはあまり出回っていなかった(ボトラーズ系は除く)ものがオフィシャルシングルモルトシリーズ「バランタインシングルモルト」として改めて発売されたもの(主にオーケストラの一員として楽器奏者がソロCDデヴューしました、みたいな)
ちなみに「バランタイン17年」において
グレンバーギーは中核
ミルトンダフは土台
グレントファースは締め
を担当しているんだそうな
ミルトンダフ蒸溜所 https://en.wikipedia.org/wiki/File:Miltonduff_Distillery.jpgより
以下公式より
ブレンデッドウイスキーは、基盤となるグレーン原酒とウイスキーの香りや味わいを決めるモルト原酒がブレンドされます。バランタイン17年では数十種のモルト原酒を使用し、「ミルトンダフ」「グレンバーギー」「グレントファーズ」の3つのキーモルトを重視。歴代5人のマスターブレンダーに受け継がれる絶妙なブレンド技術で、複雑かつ重層的な香り・味わい・余韻を実現しています。
「ミルトンダフ」の力強いしっかりとした基礎ボディー。「グレンバーギー」のフルーティーでスウィートな香り。そして「グレントファーズ」のベリーやナッツを思わせる滑らかで繊細な後味。この幾重にも重なる味わいによって、スコッチの王道と呼ばれるバランタインらしい個性が形成されます。
「ミルトンダフ」は、バランタインの骨格をつかさどる、力強ささえ感じさせるシングルモルト。ほのかにシナモンスパイスの味わいが加わったフローラルな香りのウイスキーです。クリーミーな口当たりが特長で、やさしいリコリスの香りの滑らかな味わいと、長く続く温もりある余韻が楽しめます。
さて、そのお味は・・・
麦芽糖をかけた若草の香り
メープルシロップがけ青リンゴ
澄んだ水に溶かしたホイップクリームとカラメル
90点
麦芽糖、またはメープルシロップやホイップクリームを思わせる優しい甘味と
青リンゴやライム、リコリスや若草を思わせる「緑色のそよ風」とでも言いたくなるような爽やかでキリッとした芳香が同居する、繊細な優しさと美しさのあるモルト。
「力強い」という公式の表現がちょっとわからないが、はっきりした個性的な風味を感じられる素敵なシングルモルト。
個人的には前回のグレンバーギー15年よりも惹かれてしまう
改めてバランタイン17年を飲んでみると、クリーミーな優しい甘味の奥に、青リンゴや若草を思わせるキリッと爽やかな酸味と苦味が、あくまでライトに、しかしはっきりとした芯を持って響いているのがわかる。なるほど、このあたり(正確に言えば甘味・酸味・苦味全てにわたるが)がミルトンダフの貢献なのだろう。土台、というが、確かに奥から響くミルトンダフ要素がバラン17の輪郭を決定づけている感じだ
蘭子