グレンモーレンジィ、はスコットランドはハイランド北部のロス州テインという町にある蒸留所である
1843年、元々ビール工場だった場所に蒸留所を設立。
バルブレア蒸留所の共同経営者だったウィリアム・マセソンにより、中古のスチル2基という小規模でスタートされたらしい。
グレンモーレンジィとはゲール語で「大いなる静寂の谷間」という意味
ハイランド地域は広大で、ウイスキーの特徴も一括りにはできず、東西南北の四つの地方で味わいの傾向が異なる。なかでもウイスキー造りがもっとも盛んなのが北ハイランド。この地を代表するシングルモルトとして、世界的な知名度を誇るのが「グレンモーレンジィ」である
「香りのデパート」「完璧すぎるウィスキー」とも評され、実はスコットランド本国においてはもっとも飲まれているシングルモルト。
製品はすべてシングルモルトで、ブレンド用には一切供給されておらず、仕込み水は硬水で、「良質のモルトウイスキーは軟水から作られる」という常識を覆した。
ウイスキーの仕込みには「軟水」が使われることが多い。しかしグレンモーレンジィはあえてミネラル豊富な硬水を用いることで、さわやかなフローラルの香りを生み出しているらしい。(蒸留所近くにあるターロギーの泉より。 現在は同様の硬度を持つケルピーの泉の湧水を使用している)
グレンモーレンジィの酒質を決定づけている要素は有名な「首が長すぎるポットスチル」(通称スワンネック)にもある。この長いスチルが、グレンモーレンジィを特徴づけている爽やかで軽やかなフルーティ香を集中的に抽出する
グレンモーレンジィといえば「樽のパイオニア」としても有名で、今日では当たり前のようになったバーボン樽熟成や、樽の選定から全てを管理する「デザイナーカスク」による熟成、
また多彩な酒でフレーバー付した樽で、ウイスキーを後熟する「ウッドフィニッシュ」を最初に導入したのも同蒸溜所。
伝統的にグレンモーレンジィには、ファーストフィルとセカンドフィルのバーボン樽しか使わないというポリシーがあり、当時はリリースされる製品も「10年」と「18年」くらいしかなった。
しかし、95年よりグレンモーレンジィのマネージャーとして活躍するビル・ラムズデン博士により、業界ではまだ一般的でなかった多彩な樽でのウッドフィニッシュが試みられていった。
今では他の作り手たちも追随。今やスコッチの9割の蒸溜所で導入されているほど。
今回ご紹介するのは、数あるグレンモーレンジィのラインナップ中でももっともベーシックな一本である「グレンモーレンジィ・オリジナル・10年」である。
さて、その味わいはいかなるものだろう・・・
澄んだ水でといたハチミツと生クリーム
マンダリンオレンジとレモンをまぶしたケーキ
朝食のパンの香りと
ココナッツとバナナとシナモン
88点
爽やかで淡麗でライトで、澄んだ水のようにするするっと飲みやすい。
優しい甘さとフルーティなフレーバーが淡く入り混じり、決して地味ではなく、さりげなくきらびやかで華やか
グレンフィデックやグレンリベットなどと並んで、よくウィスキー初心者におすすめされる一本だが、むしろキャラクターの濃いものを色々飲み慣れてから改めて立ち戻ってみると、新しい魅力に気づかされる気がする。
多彩なウッドフィニッシュものも美味しいが、樽魔術に染まる前の素地のナチュラルな魅力の豊かさも捨てがたい。ハイボールにするにもかなりオススメだ。
派手ではないけど、さりげないおしゃれが実はエレガントでハイセンス、そんな一本だと思う。
蘭子