ブナハーブン(ゲール語で「川の河口」を意味する)はウィスキーの聖地とも呼ばれる・アイラ島(スコットランド本島の西・インナー・へブリディーズ諸島の最南端に位置する島)にある蒸留所のひとつである(創業は1881年)。
アイラ島のウィスキーの一般的な特徴は、
原料の麦芽を乾燥させるために燃やすピート(※1)の焦げたような燻製香の強い主張や、微かな潮風の匂い(ヨード香とも言う)。
だが、今回ご紹介するブナハーブンは珍しくノンピートである(味わいについては後述)
ブナハーブン(ゲール語で河口の意味)はアイラ島ではもっとも北にある蒸留所で、人里離れた入り江近くにある(正面にはジュラ島も見える)。ブナハーブンとはゲール語で『川の河口』の意味だが、仕込み水は、この入り江に流れこむマーガデイル川の湧水を使用している。
創業は1881年、1世紀を超える歴史ある蒸溜所だが、アイラのなかではどちらかというと後発。偉大なる先達たちの際立った特長であるピーティーさやスモーキーさとは一線を画した味わいが目指された。
ご近所たちと比べるとむしろ異端的、アイラらしからぬアイラ、であるが、もっとも優しく最も飲みやすいアイラ、とされ、特にアメリカのマーケットでの需要は高いらしい。
もとカティサークやフェイマスグラウスなどのブレンド用に使われていたが、1979年、シングルモルトとしても発売された。ちなみにNon Chill filtered(冷却ろ過はされていない)。
ブナハーブンはもともとアイラモルトしては軽い酒質だったが、全くのノンピートでいくと決まったのは第二次大戦後のこと。カティサークのブレンド用に軽いものが求められたからである。
しかし1997年頃からピーテッド麦芽の仕込みも再開し、現在では生産量の40%にピート麦芽が用いられている。
ブナハーブン入門の12年ものは、バーボン樽熟成原酒メインだが、シェリー樽熟成も配合されている。
https://www.whisky.com/whisky-database/distilleries/details/bunnahabhain.html より
89点
スモーキーさはほとんどなく、シェリー樽由来のドライフルーツ感と柔らかい木香が豊かに響き、さらにまるでココアや和菓子、バナナ、ウェハースのようなほっこりとした優しい甘さもある。酒質もライトで親しみやすい。
しかし、やはりそこはアイラ島の海のモルトらしい、微かな潮気と海藻のような風味も奥からしみ出してもくる。スペイサイドやハイランドにもありそうでない、不思議な魅力を放つ一本。
ピーティ、スモーキーなだけがアイラではない。落ち着いた甘味とほんのりとした潮気に浸れる「もっとも優しいアイラ」をご堪能あれ
蘭子