クラガンモア(ゲール語で突き出た大岩の丘)蒸留所は、スコットランドでももっとも多くの蒸留所が密集するスコッチウィスキー最大メッカとして知られるスペイ川流域のエリア、通称スペイサイド(全長172キロの川の流域に、なんと50もの蒸留所がある)にある蒸留所のひとつ。
山に囲まれ、豊富な緑や花々と良い水に恵まれたスペイサイドのウィスキーに共通する特徴は、比較的飲みやすい華やかな甘さであると言われている。ピートの香りがきついものはほとんどない。
↓スペイ川とスペイサイドにある蒸留所(なんとこの地域だけで50以上ある)
(http://familyhouseonspeyside.com/neighborhood/ より)
今回紹介するクラガンモア12年(バーボン樽熟成)は、ディアジオ社のクラシックモルトシリーズ(※)において、スペイサイド代表の銘酒として選ばれていたり、著名な評論家マイケル・ジャクソンの採点でも90点という高得点をたたき出した栄誉ある一本。
クラガンモアのウィスキーは、オールドパーやホワイトホース、ジョニーウォーカーなど有名ブレンデッドのキーモルト(香味の中核となるもの)としても知られている。
シングルモルトとしても評価が高く、有名評論家の故マイケルジャクソン氏が12年ものに90点と、マッカランやロングモーンに次ぐ高得点を与えている。また、ディアジオ社のクラシックモルトシリーズでスペイサイド代表に選ばれたのをきっかけに知名度を増していった。
さて、1869年創業のクラガンモア蒸溜所だが、その創業者ジョン・スミスは、既にご紹介済みのザ・グレンリベットの創業者ジョージ・スミスの私生児といわれている。
ジョン・スミスは、クラガンモア創設の前にマッカラン、グレンリベット、グレンファークラス(いずれもスペイサイドにある)など、そうそうたる蒸留所のマネージャーを歴任。
やがて理想のウイスキーを作る地として、白羽の矢をたてたのが、バリンダルロッホの地。
決め手となったのは、昔から密造者の間では有名なクラガンモアの丘から湧き出る良水の存在。そして輸送の便。当時はスペイ川沿いをストラススペイ鉄道が走っており、スミス自らが直接、蒸留所に引き込み線を敷き、大量輸送を可能にしたのだそうだ。クラガンモアのラベルに描かれているのは、その鉄道。
ユニークなのは使用されているポットスチルの形。通常のスワンネック型ではなく、煙突のようなT字シェイプ(このT字シェイプは他にダルモア、プルトニーなど。しかしスコッチでもかなり珍しいらしい)。創業者ジョン・スミスのオリジナルデザインをそのまま受け継いでいるらしいが、この小さくて頭部の平坦なものを使うことで、蒸留器内で大量の還流を引き起こし、それが原酒の豊かで複雑なフレーバー含有につながっているのだそう。
(参照⇒ http://whiskymag.jp/%E5%9E%8B%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%81%BE%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%A2%E3%82%A2/)
↓クラガンモアのポットスチルとグレンファークラスのポットスチル(写真も上記のページより)
※クラシック・モルト・シリーズとは、各地域の特徴を代表する銘柄を一本選び、それらをセット売りにしたもの。北ハイランドから「ダルウィニー」、西ハイランドから「オーバン」、スペイサイドから「クラガンモア」、ローランドから「グレンキンチー」、アイラから「ラガヴーリン」がそれぞれ選ばれている
クラガンモア蒸留所↓
(https://www.spiritsociety.ch/whisky-cragganmore-25-ans.html?___store=de&___from_store=frより)
さて、その味わいはいかに・・・
実に華やかでスイートでフルーティ。香水のような豊かな香気を放つヘザーの花畑、蜂蜜とフルーツの豊かな甘味。かすかにソルティでスパイシーな樽の香味もかすかに効いている。香水を纏った淑女が花々豊かな貴族の庭園を歩いているようなイメージ。
華やかでフルーティ、というスペイサイドモルトの一般的なイメージのお手本のような容姿端麗なウイスキーで、クラシックモルトシリーズでスペイサイド代表として選ばれたのも納得。上品でクセもなく飲みやすく、ウイスキー初心者やウイスキー自体苦手な人にも勧められそう。ちょっとおしゃれなパーティやお祝い事にでも持っていきたくなる感じもある。3000円台というコスパも素晴らしい。タリスカーやラガヴーリンと抱き合わせでセットになっているクラシックモルトシリーズ(7~8000円)もおすすめ。
蘭子